◆このインタビューは2000年8月に行われました。
◆今回の取材は高嶋ちさ子さんのご好意でインタビューさせていただきました。
PHOTO BY 関根一秀
 私、とっても偏食で好き嫌いが多いんです。でも、母が作ってくれたものなら何でも美味しくって…。まさに体と心の活力源ですね。(高嶋ちさ子)

 バイオリニストとして高名である一方、最近ではテレビのバラエティ番組『踊る!さんま御殿』等にも出演され、そのユニークな会話でクラシック音楽のすばらしさ、カジュアルさを伝えている高嶋さん。彼女のライブはクラッシックファンでなくても年代を問わず気軽に十分楽しむことができる、従来のクラシックコンサートにはない、来場者全員が参加できるライブなのである。

――コンサートが大変好評だとお聞きしましたが?

 「ありがとうございます。会場には、チェアウォーカーの方もどんどん来て下さい。」

――音楽活動など海外への行き来も多いようですが?

 「私の姉は障害を持っているので、いつも感じるのが、やはり日本と外国との違いは、心というか意識かもしれません。日本のライブやコンサート会場でのチェアウォーカーの席というのは、後ろとか端の方になってしまいます。でも外国って一番良い席にチェアウォーカーの席が用意されている所が多いですよね。そこには気軽にチェアウォーカーの方々が聴きに来ています。一般の観客よりも感性の強い方々が多いですし、本当に真剣に聴いてくれます。ですので逆に緊張してしまいます。」

――さんまさんの番組などで、自分のことをせっかちのあわて者と言っているのをお聞きしたのですが?

 「そうなんですよ(笑)。玄関の鍵を閉め忘れて途中で気が付き、もう一度家に戻る事もしばしばなんです。ですからコンサートの時なんて大変です。1つ1つチェック。靴は履いているか、ドレスはあるかというように、何度も何度も確かめるのです。女性版『長嶋監督』みたいなんです(笑)。この性格ですからレパートリーの練習も可能なかぎりします。それでも、不安で不安でたまらないんですよ。自分が納得できた事なんて、本当に数少ないんです。」

――バイオリニストになろうとしたきっかけは、何かあるのですか?

 「私、本当は身体を動かすことが得意なんです。ですから、音楽家になろうなんて思ってもみなかったのです。どちらかと言えば、手に職をつけなければのノリでバイオリンを本格的に始めたんです。もちろん1日8時間とか10時間練習しました。チェアウォカーの方々もリハビリのために訓練など毎日なさっているのですよね。環境は少し違うかもしれませんが、努力すれば、望みや夢は必ず叶うと思います。その努力が苦しければ苦しいほど、叶う夢は大きいと思います。」

――先程、お姉さんが障害を持っているとお聞きしたのですが?

 「私には兄もいるのですが、子供の頃は、彼女を守るということが生活の中で大きな部分を占めていました。守るといっても、母は違っていましたけど。そうです、私が無理やりに有名にしてしまった母です(笑)。『クソババァー』と呼んでいますと、テレビで言ってしまって以来、母はクソババァー的イメージが強くなってしまいました。家の母はとっても姉には厳しかったです。普通、障害を持つと、親は過保護になりがちですが、姉に対しては、礼儀、身だしなみ、教育、ありとあらゆる事に対して、普通に、もしかすると私達以上に厳しく接していました。決していじめとか差別というものではなく、ごく当たり前に、自分の置かれた環境を理解し、その事に甘えるのではなく、乗り越えるということを教えたのだと思います。
母としてはある意味ではつらいことだったと思います。姉が障害を持ったということを知ったとき、母の頭髪は1日で白髪になってしまいましたから。私達はそのような母に育てられましたから、障害とかそういうものに対して現在まで何の違和感もなく育ちました。私は母を尊敬と最愛の言葉で、クソババァと呼ばしてもらっています。今ある私は母のおかげだと感謝をしています。」

――高嶋さんにとって、印象に残る料理は何でしょうか?

 「私の印象に残る食事、味は家族です。7月に家族で行ったスイスでのチーズフォンデュも忘れられません。もちろん味も美味しかったし、周りの景色や開放感もあったのですが、何よりも家族で一緒に食べた食事ということがいっそうの味をかもし出したと思います。やはり愛する人、安らげる人との食事が一番美味しい食べ物だと思います。ですから、母の作ってくれた食事は、私にとって世界で1番大切な味です。」

――今号の特集でチェアウォーカーが行ける屋台を取り上げているのですが、屋台についての思い出とかありますか?

 「そうですね、屋台はあまり知らないのですが、私、ラーメンが大好きなのです。屋台でラーメン食べてみたいですね。逆にこの号を参考にさせていただき、必ず行ってみたいと思います。とっても楽しそうですよね。屋台のおじさん、おばさんとの会話も楽しそうだし、何といっても気取りのないところ。そして、見知らぬ人々が肩を寄せあっておしゃべりができるなんて、とってもステキじゃないですか。それに野外という開放感も魅力ですよね。もしかしたら、どこかの屋台で、チェアウォーカーの方とお会いできるかも知れませんね。そのときは一緒にラーメンすすりながら、色々なお話をしましょうよ。」

 実際にお会いしてみると、テレビで見る以上にとってもキュートでステキな方でした。また、ご協力の王子ホール(Vol.3 耳よりNEWSにて紹介)は高嶋ちさ子さんの一押しのコンサート会場です。ここは前列4席の一番良い場所が移動でき、車イスシートになる。こんな会場で、高嶋ちさ子さんが奏でるバイオリンの音色を聞いてみませんか。

<プロフィール>
たかしまちさこ
昭和43年生まれ。東京都出身。6歳からバイオリンを始める。現在までにアルバム、シングル計8枚をリリース。コンサートも積極的に行い、この秋からは全国ツアーも開始される。また、NHK教育の「芸術劇場」の司会を担当するなど、活躍の場は多方面にわたっている。