◆このインタビューは2000年12月に行われました。
◆今回の取材は中嶋常幸さんのご好意でインタビューさせていただきました。
 プロゴルファーの中嶋常幸さんは、チェアウォーカーのために、ゴルフ場の開放とラウンドプレーを考えている。

――色々とチェアウォーカーの人のために考えていただきありがとうございます。

 「そんな事ないです。僕自身も楽しみたいと思っています。ゴルフってとっても楽しいですよ。広いフェアウェイの上をのんびりと車イスで歩いて欲しいですし、美味しい空気を吸いながらスポーツを楽しんでもらいたいと。そこで僕に出来る事といえばゴルフ。ゴルフなら誰にも負けない自信がありますし。」

――障害者スポーツは、だんだん盛んになってきましたが、ゴルフはまだまだですよね。どうしてもゴルフの場合だと、グリーンの芝生が傷むとか、アップダウンが厳しい事とかもあり、受け入れてくれるゴルフ場やコースが、非常に少ない事があります。

 「そうですね。僕の知っている限りでも、年に一回、障害者ゴルフ大会が開催されていますが、週末、ゴルフを楽しむとか練習をするとか、レッスンを受けるというような環境はないですね。いろいろとクリアーしなければならない事が沢山あると思います。ただ、ゴルフってとってもメンタルなスポーツで、集中力や精神力を養うのに最適ですし、それと自分の時間でプレーをする事が大切なスポーツなのです。そういう意味では、チェアウォーカーの方にとってむいているスポーツの一つだと思うのです。確かに、障害の程度によってクラブの形状とか設備の問題など、時間をかけて改善、開発をしなければいけないと思っています。WaWaWaの読者の方はもちろん、ゴルフをしたいと思っているチェアウォーカーの方々のご意見を伺いながら、良い環境を作り上げて行きたいと思います。」

――いいですね。空の下、自然のなかというのは、チェアウォーカーにとって体験したいものですが、なかなか体験する環境などないのですよ。それにゴルフのプレーが出来たら最高ですね。

 「チェアウォーカーの方たちとプレーする時は、僕も車イスに乗ってプレーをしますよ。プロですからね、どんな環境に置かれても負けませんよ。それにチェアウォーカーの人だからって、絶対に手を抜きませんよ。そのくらいの気持ちで一緒にプレーします。車イスでのプレーはとっても難しいと思いますが、必死で練習をします。『皆さんかかってきなさい!!』

――中嶋さん、ここまで言ったら負けられませんよ。

 「そうですね。でも自分で自分を追い込むという事も大切な事です。公言したからには必ず守ります。そしてそのために最大限の努力をする事で、結果に自分自身が納得できるのだと思います。適度のプレッシャーは人間を大きくすると思います。」

――中嶋さんは数々の大きな大会にも出場されていますし、優勝もされていますが、一番始めのティーショットや優勝を決めるパットなどは、物凄いプレッシャーなのではないですか?

 「それは良くシビレルって表現をしますが、心臓バクバクですよ。その時こそ音楽なのですね。自分の精神状態を平静に保ったり、気持ちを高揚させるために色々な音楽を聴きますよ。」

――何か必ず聴く音楽はありますか?

 「僕の場合は決まった音楽はないですね。その時その時、自分が聴きたい曲を聴きます。そして音楽を聴く事で、スポーツに関わっている人間なら誰でも恩恵をうけているのではないでしょうか。」

――音楽の話が出たところで、もうすぐクリスマスですが、中嶋さんの思い出のクリスマスソングってありますか?

 「『ジングルベル』ですね。それと、家がクリスチャンという事もあり、教会のミサにはよく行きますよ。そこで歌われる賛美歌、ゴスペルは胸に打たれるものがあります。何か心に響くものがありますね。音楽というものは、その時の環境や心境で色々な形で人の心に訴えるものではないでしょうか。」

――確かに、どんな楽しい曲でも自分のテンションが低いときには、素直に入ってこないし、ハイテンションのときには失恋の歌でも悲しい気持ちよりも、歌自体の良さが伝わってきますね。

 「僕は目が悪いんですよ。だからメガネをかけているのだけど、去年視力回復手術を受けたのです。その時に短時間でしたが光のない世界を体験し、人の力を借りる事の大切さを実感しました。僕の体験した時間などは皆さんがすごしている時間に比べたら、比較にならない事は充分に承知しているのですが、その時感じた事は太陽を思う存分浴びたい、空気、風を感じたいという事でした。先程も申し上げましたが、僕はプロゴルファーです。リハビリや福祉については素人です。どちらかといえば何も知らないと言ってもいいほどです。でも自分が今出来る事で、楽しい事をしたいと思います。そして夢は、チェアウォーカーゴルフの全国大会をしたいですね。そのためには何処のゴルフ場でもプレーが出来るような環境を作るための努力を約束します。最初は小さな大会かも知れませんが、来年の春頃に第一回目の大会をしたいと思っています。 
  WaWaWaさんも協力してください。僕も最大限の努力をします。そうだ、まず初めに、うちのゴルフ場に来て、体験、検証をしてみてくれませんか?」

――本当ですか? 是非やってみたいですね。ルールとかゴルフクラブのアイディアとか一緒に作り上げていきましょうよ。

 「いいですね。大会のときにはライブもしたり、何か皆で楽しい事をしましょう。」

 中嶋さんの思いもかけない発案から、チェアウォーカーゴルフの検証、そして来年の大会に向けてWaWaWa編集部も協力をさせていただく事になり、まずはじめに、11月18日東松苑ゴルフクラブにプレーをしに行く事になりました。その結果及び報告は、随時誌面やホームページでご紹介していきます。興味のある方はドンドンご参加ください。

<プロフィール>
なかじま つねゆき
プロゴルファー。1954年、群馬県生まれ。75年プロに。77年、83年、84年の日本プロゴルフ選手権優勝をはじめ、数々の大会で勝利をおさめ、その数56回。82、83、85、86年には賞金ランキング1位を獲得。名実ともに日本を代表するトッププロゴルファーであり、『トミー』の愛称で親しまれている。